絵おと芝居の演者は被災者として紙芝居を読んできたが、
舞台役者としては素人だ。
今回は東京のど真ん中で行う有料の催し、
それなりのものを見せなくてはなるまいとの思いから
演技指導を劇団銅鑼の俳優 館野さんにお願いした。
福島の避難先の集会所で5時間に及ぶ練習、
実に熱心に指導いただいた。
・
練習・交流会をひとしきり終え、
宿での二次会も終わろうとしたときだった。
館野さんが声をひそめるように
“演じている感がもったいない”と話す。
意味が分からず聞き返した。
曰く、プロの世界では、本物を見せることができるのが
良き役者、つまり名優への道とされている。
今回の絵おと芝居の出演者は物語の当事者、
体験をそのままを演じることができれば、
どんな名優でもかなわない、
本人なのに演技しているのが勿体ないと話されるのだ。
理解できる。
私はその話を直接話をしてくださいとお願いした。
う~んと深く考え込まれ、
演技をこえた本物の世界を見せろというのは
プロの役者でも難しい、時間のない中
かえって混乱するのではないかといわれる。
もっともだ。
結局、その話はせずにわかれた。
・
本人が演ずる本人の物語、そんな芝居、
誰も見たことがないだろうと館野さんはいう。
父、母、娘、家族全員で演ずる家族の物語、
あの日が舞台の上でよみがえったとき
どんな芝居にも負けない大きなメッセージを残すことだろう。
PR